個人のコーチングでも、金銭が動く以上は書面で条件を残しておくのが安全です。最低限そろえる項目を整理します。
知り合いからの依頼で始めたコーチングに、契約書を用意すべきかどうかで迷う人は多くいます。堅苦しくなるのではないか、信頼していないと思われないか、という懸念が先に立つためです。この記事では、書面が必要になる場面、個人が最低限そろえておく項目、作るときの進め方を整理します。
個人のコーチングに書面が必要になる理由

契約は口頭でも成立しますが、口頭だと何を約束したかが残りません。金銭のやり取りがある以上、個人であっても条件を書き残しておくほうが安全です。
認識のずれは、悪意がなくても起きる
回数、期間、連絡の範囲。こうした条件は、伝えたつもりでも受け取り方が変わります。書面があれば、後から確認する共通の材料になります。
途中で終わるときにいちばん必要になる
最後まで問題なく終わる場合、書面はほとんど使いません。必要になるのは、途中で続けられなくなったときです。残りの回数や返金をどう扱うかが決まっていないと、その場で交渉することになります。
相手にとっても安心の材料になる
条件が書かれていることは、信頼していない印ではありません。むしろ、何をどこまでやるかが明示されているほうが、申し込む側は判断しやすくなります。
MIKATA編集部で個人のコーチやカウンセラーの発信を読むと、料金や回数の説明を案内文に書いている例は多い一方で、取り消しや返金の条件まで明記している例は少数でした。書面の有無以前に、条件そのものを決めていない段階の人が多いことがうかがえます。
最低限そろえる項目
個人で始める段階では、分量の多い書面である必要はありません。次の項目が入っていれば、最低限の役割は果たします。
| 項目 | 書く内容 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
| 提供内容 | 何を、どの形式で行うか | 範囲外の要望が続く |
| 回数と期間 | 全何回、いつまでか | 終わりが決まらない |
| 料金と支払い | 金額、支払い方法、時期 | 入金の遅れが常態化する |
| 取り消しと返金 | 変更の期限、途中終了の扱い | その場で交渉になる |
| 連絡の範囲 | 面談外の連絡の可否と時間帯 | 時間外の対応が増える |
| 守秘 | 話した内容の扱い | 不安で話してもらえない |
連絡の範囲は必ず入れる
面談以外の時間に連絡が来る形は、個人で活動する人の負担が最も増える箇所です。対応する時間帯と、返信までにかかる時間の目安を書いておいてください。
取り消しの期限は日数で書く
「早めにご連絡ください」といった書き方では、何日前までかが伝わりません。前日まで、三日前まで、といった形で日数を数字で書いてください。変更が続いたときに、その都度判断せずに済みます。
提供しないことも書いておく
医療的な判断はしない、法律に関する助言はしない、といった範囲外の明示も入れてください。扱わないことを書くのは、相手を守ることにもなります。
編集部で取材や制作の依頼を扱っていて実感するのは、書面が役に立つ場面は争いのときではなく、始める前に条件を確認する場面のほうが多いという点です。書こうとすると、決めていなかった箇所が必ず出てきます。作る過程そのものが、自分の提供内容を整理する作業になります。
作るときの進め方

最初から完成した書面を目指すと、手が止まります。決める順番を分けてください。
- 自分の提供内容を箇条書きで出す
- 回数、期間、料金を数字で決める
- 取り消しと返金の条件を決める
- 決めた内容を書面の形に並べる
- 実際に使ってみて、聞かれた点を追記する
- 内容が固まった段階で、専門家に確認してもらう
先に条件を決め、書式は後にする
書式を探すところから始めると、自分の条件が決まっていないまま他人の条件を写すことになります。決めるのが先、形にするのは後です。
実際に使いながら追記する
最初から想定できる場面には限りがあります。実際に申し込みを受けて、聞かれた点や困った場面をそのつど追記していってください。十件ほど受けると、必要な項目はおおむね出そろいます。
専門家の確認を受ける段階を想定しておく
この記事で扱うのは、自分の提供内容を整理するための考え方までです。実際に使う書面の内容が法的に妥当かどうかは、弁護士や行政書士など、その分野の専門家に確認してください。
渡し方と保管

作った書面をどう渡すかで、相手の受け取り方が変わります。
▼ 渡すときの確認項目
- □ 申し込みの前に内容を読める形で渡している
- □ 分量が多すぎず、要点が最初に分かる
- □ 同意の形を決めている(署名、電子的な確認など)
- □ 双方が同じ内容を保管している
- □ 変更があった場合の扱いを決めている
- □ 保管の期間を決めている
申し込みの前に渡す
入金後に条件を渡すと、内容に納得できなかった場合に取り消しの話から始まります。判断してもらう材料なので、申し込みの前に読める状態にしてください。
同意の形を決めておく
紙に署名をもらう形でも、内容を確認したという返信をもらう形でも構いませんが、どちらにするかは先に決めてください。毎回違う形にすると、記録が残っている件と残っていない件が混ざります。
要点を先に置く
長い文面を最初から読ませると、読まれないまま同意されます。回数、料金、取り消しの条件だけを先頭にまとめて置くと、確認されやすくなります。
知り合いから依頼されたとき

個人で始める段階では、知人からの依頼が最初の仕事になることがよくあります。この場合こそ、条件を書いておく必要があります。
知人相手に条件を伝える順番
- 全員に同じ条件で案内していると先に伝える
- 料金と回数を数字で示す
- 途中で終える場合の扱いを、始める前に共有する
相手を疑っているわけではないと伝える
「決まりとして全員にお渡ししています」と伝えると、個別の不信ではないことが伝わります。特別扱いをしないことが、結果として関係を保ちます。
終わり方を先に決めておく
知人が相手だと、続けるかどうかを言い出しにくくなります。全何回でいったん区切る、そこで続けるかを双方が決める、という形にしておけば、断る場面を作らずに終われます。
値引きするなら条件も書く
知人に値引きをする場合でも、通常の料金と、今回の条件を両方書いておいてください。書いていないと、その金額が基準として続いてしまいます。
書面がなくてもできる備え

すぐに書面を用意できない場合でも、残せるものはあります。
案内文と申し込みのやり取りを保存する
料金や回数を書いた案内文と、申し込み時のやり取りを保存しておけば、何を伝えたかの記録にはなります。書面が整うまでのあいだも、この形で残してください。
面談ごとに、決めたことを短く共有する
その回で決めたことを、終わったあとに数行送る習慣をつけると、進め方の認識がずれにくくなります。書面の代わりにはなりませんが、後から見返せる記録になります。
記録の保管の仕方も決めておく
面談の記録や、やり取りをどこに保管するかを決めておいてください。個人の情報を扱う以上、誰でも見られる場所に置かないこと、保管の期間を決めておくことは、書面の有無にかかわらず必要になります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 個人のコーチングでも契約書は必要ですか。
A. 金銭のやり取りがある以上、条件を書き残しておくほうが安全です。契約は口頭でも成立しますが、何を約束したかが残らないため、途中で終える場面で判断の材料がなくなります。
Q2. 最低限、どの項目を入れればよいですか。
A. 提供内容、回数と期間、料金と支払い、取り消しと返金、連絡の範囲、守秘の六つです。個人で始める段階では、この範囲で最低限の役割は果たします。
Q3. 書式はどこから用意すればよいですか。
A. 書式を探す前に、自分の条件を数字で決めてください。決めていない状態で他人の書式を写すと、自分の提供内容と合わない条件が残ります。内容が固まった段階で、弁護士や行政書士に確認を依頼してください。
Q4. 知り合いからの依頼でも条件を渡してよいのでしょうか。
A. 全員に同じ条件で案内していると先に伝えたうえで渡してください。個別の不信ではないことが伝わり、途中で終える場合の扱いも始める前に共有できます。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
