その場で迷うのは気持ちの問題ではなく、扱いを先に決めていないからです。決める順番を置きます。
面談の終わりにお礼の品を差し出された。断るのも受け取るのもその場では決めきれない。この記事では、判断が難しくなる仕組みと、先に決めておくことを整理します。
MIKATA編集部に届く個人事業の相談では、贈り物について「断ったら傷つけてしまう気がした」という書き方が出てきます。迷っているのは礼儀の話ではなく、関係への影響のほうです。
その場で決めきれない仕組み

気持ちの問題ではなく、扱いが決まっていない状態です。
断る理由が言葉になっていない
なぜ受け取らないのかを自分の中で言えていないと、その場で断る言葉が出てきません。
相手の気持ちが見えている
感謝を形にしたい気持ちは伝わってきます。見えているぶん、断ることが拒む行為に感じられます。
関係の性質が変わる
お礼を受け取ると、料金のやり取りとは別の貸し借りが生まれます。そのあとの面談で扱いにくさが出ます。
返さないといけない気がする
受け取ったあとに何かを返そうとすると、支援の関係の外側にやり取りが増えます。
その場では時間がない
面談の終わり際は次の予定が控えています。落ち着いて説明する時間がありません。
金額が判断を揺らす
高価なものは断りやすく、小さなものほど断る理由を作りにくくなります。額で決めると基準がぶれます。
所属によって決まりが違う
団体に属している場合は倫理綱領や職場の規定で扱いが決まっていることがあります。確かめていないと迷います。
受け取る場合と受け取らない場合

額ではなく、関係への影響で分けます。
原則は受け取らない
支援の関係を保つため、原則として受け取らないと決めておく形がいちばん揺れません。毎回の判断が要らなくなります。
受け取る場合の条件
受け取ると決めるなら、どこまでなら受け取るのかを先に書いておきます。その場で決めないためです。
| 差し出されたもの | 考えること | 対応の例 |
|---|---|---|
| 高価な品 | 関係の性質が変わる | 受け取らないと伝える |
| 手紙・カード | 気持ちの表現 | 受け取る形もある |
| 手作りの食べ物 | 背景に意味があることも | 背景を聞いてから判断 |
| 小さな消耗品 | 断る理由を作りにくい | 方針として一律で扱う |
| 終結時のお礼 | 区切りの意味がある | 方針を先に伝えてある前提で |
| 現金・商品券 | 料金との区別がつかない | 受け取らない |
一律で決めるほうが楽になる
ものによって変えると、毎回その場で判断することになります。一律にしておくと説明も同じ言葉で済みます。
受け取れないものははっきりしている
現金や商品券のように料金との区別がつかないものは、どの立場でも受け取らない扱いになります。ここは迷う必要がありません。
背景に意味がある場合
差し出すこと自体にその人にとっての意味があることがあります。断る前に何を伝えたいのかを聞く場面もあります。
その場で困らない順番

面談の中で対応できる形を作ります。
編集部で、相談を受ける立場の案内文を書き出して比べました。贈り物の扱いが先に書かれているものでは、そもそも差し出される場面が少なくなっていました。先に伝わっているかどうかが効いていました。
扱いを決める手順
- 所属団体の倫理綱領と職場の規定を確かめる
- 受け取るかどうかの方針を一つに決める
- 断るときの言葉を一文用意する
- 案内文と初回の説明に、方針を書いておく
- 差し出されたら、方針として短く伝える
- 断った場面を記録に残す
先に書いておく
案内文に「お気持ちのみ頂戴します」と書いておくと、差し出される場面そのものが減ります。
断る言葉を一文にする
「お気持ちだけありがたく受け取ります」で足ります。理由を長く説明すると、相手は断られた理由を探します。
方針として伝える
その人だからではなく、全員に同じ方針だと伝えます。個別の判断に見えないほうが受け取られやすくなります。
気持ちは受け取る
品物は受け取らなくても、感謝の気持ちは言葉で受け取ります。そこを抜かすと冷たい断りになります。
受け取らない理由は相手のためだと伝える
決まりだからではなく、関係を保つためだと添えると、拒まれた印象が薄れます。一文で足りるので、断りの言葉に続けて置きます。
持ち帰って返す場合の手順
その場で断れずに受け取ってしまったときは、次回に方針を説明して返します。黙って持ち続けるより区切りがつきます。
記録に残す
誰から何を差し出されどう対応したかを記録に残しておきます。あとから扱いを確かめられます。
案内に書くときのチェック

先に伝わっている状態を作ります。
▼ 方針のチェック
- □ 所属団体の倫理綱領を確かめた
- □ 受け取るかの方針を一つに決めた
- □ 案内文に書いた
- □ 初回の説明で伝えている
- □ 断る言葉を一文用意した
- □ 対応を記録に残す形がある
初回に伝えておく
案内文だけでなく、初回の説明でも一言触れておくと、あとから断る場面がほぼ無くなります。
同居家族からの場合もある
相談者本人ではなくその家族から差し出されることもあります。扱いは同じですが、本人の知らないところでやり取りが起きないよう注意が要ります。同じ方針をそのまま伝えます。
終結のときも同じ
最後の面談は差し出されやすい場面です。方針が伝わっていれば、そこでも同じ言葉で済みます。
受け取った場合の扱いも決める
受け取ると決めた品がある場合、職場のものにするのか個人で受け取るのかまで決めておきます。
断ったあとの様子を見る
断ったあとの面談で相手の様子が変わっていないかを確かめます。気にしている様子があれば、方針の話だともう一度伝えます。
迷った場面を持ち帰る
判断がつかなかった場面は、スーパービジョンや同業との検討の場に持っていきます。
避けたほうがいい対応

その場をおさめようとすると、あとに残ります。
その場だけ受け取る
今回だけ、と受け取ると次も同じ場面が来ます。そのとき断る理由がさらに作りにくくなります。
相手によって変える
長く来ている人には受け取り、初めての人には断る。この差は説明がつきません。
理由を長く説明する
倫理や関係性の話をその場で詳しく説明すると、相手は悪いことをしたように感じます。短く方針として伝えます。
お返しをする
受け取った分を別の形で返すと、支援の関係の外にやり取りが増え続けます。
嬉しさを見せてから断る
喜ぶ様子を見せたあとに断ると、相手は受け取れたはずだと感じます。気持ちへの感謝と品物の扱いは分けて伝えます。
受け取ったことを黙っている
職場に属している場合、記録に残さずにおくとあとから問題になります。扱いを共有しておきます。
確かめておくところ
扱いは立場によって変わります。
所属団体の規定を優先する
公認心理師や臨床心理士、産業カウンセラーなど、所属する団体には倫理綱領があります。この記事の内容よりそちらが優先されます。
多重関係の考え方を押さえる
支援する関係とそれ以外の関係が重なることを多重関係といいます。贈り物のやり取りはその入口になりやすい部分です。各団体の資料で考え方を確かめておいてください。
一人で決めない
判断に迷う場面は、スーパーバイザーや同業の検討の場に持ち込みます。一人で決め続けると基準がずれていきます。
決めておくこと自体が支援になる
扱いが決まっていれば、相手も気を使う場面が減ります。断られるかどうかを考えずに済むことは、来る側にとっても楽な形です。
個人で続ける仕事の整え方を、無理のない形でお届けしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 小さなものなら受け取っていいですか。
A. 額で決めると基準がぶれます。受け取るか受け取らないかを一律で決めておくほうが、毎回の判断が要らなくなり説明も同じ言葉で済みます。
Q2. 断ると傷つけませんか。
A. 品物は受け取らなくても、感謝の気持ちは言葉で受け取ってください。そこを抜かすと冷たい断りになります。方針として伝えると個別の拒否に見えません。
Q3. 手作りのものを持ってこられました。
A. 差し出すこと自体にその人にとっての意味があることがあります。断る前に何を伝えたいのかを聞く場面もあるので、迷ったら持ち帰って検討してください。
Q4. どこに書いておけばいいですか。
A. 案内文と初回の説明の両方に入れてください。先に伝わっていると、差し出される場面そのものが減ります。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
