面談記録は感想を残すものではなく、第三者が読んでも判断できる形で残すものです。項目と書き方を整理します。
面談のあと、何をどこまで書けばよいのか決まっていない。個人で活動するカウンセラーには、記録の形式を指示してくれる相手がいません。書きすぎれば負担になり、書かなければ次回に使えない。この記事では、記録を残す目的、入れる項目、外に出せる書き方と保管の決め方を整理します。
記録を残す目的を先に決める

何のために残すのかで、書く内容は変わります。目的を決めないまま書き始めると、毎回長さも項目も変わります。
次回の面談で使うため
最も基本的な目的です。前回何を話し、何を決めたかが分かれば、二回目以降を続きとして始められます。この目的なら、記録は数行で足ります。
自分の関わり方を振り返るため
その回に自分が何をしたのかを残しておくと、対応の型が増えているかを後から確認できます。指導を受ける場に持っていく材料にもなります。
外に出す可能性に備えるため
相談者本人からの求め、紹介先への情報提供、その他の手続き。記録が外に出る場面は起こり得ます。そのときに問題にならない書き方を、最初から使っておくのが確実です。
MIKATA編集部で心理職向けの発信を読み比べたところ、記録の書き方について繰り返し出てくる基準は「第三者が読んでも分かるか」でした。自分だけが読み返すためのメモと、外に出す可能性のある記録では、書く内容が変わります。個人開業では、この二つが混ざったまま運用されがちです。
記録に入れる項目
項目を固定すると、毎回何を書くか考える工程が消えます。
| 項目 | 書く内容 | 書かないこと |
|---|---|---|
| 日時と形式 | 日付、時間、対面か通話か | — |
| 主訴 | 相談者が言った困りごと | こちらの言い換え |
| 状況 | その回に語られた事実 | 推測した背景 |
| 見立て | こちらがどう捉えたか | 断定的な判断 |
| 対応 | その回に自分がしたこと | 感想 |
| 次回 | 決めたことと確認する点 | — |
主訴は相談者の言葉のまま書く
こちらの言葉に置き換えると、後から読んだときに本人が何に困っていたのかが分かりません。言われた言葉をそのまま短く残してください。
対応を必ず書く
何を話したかだけを残すと、自分が何をしたのかが分かりません。その回に使った方法、確認した点、提案した内容を一行残しておくと、対応の型が増えているかを後から確認できます。
次回の確認事項を一行残す
次に会うまでに何が変わったかを聞けるよう、確認する点を一つ書いておいてください。この一行があると、二回目以降を続きとして始められます。初回と同じ説明から始めずに済みます。
見立ては断定しない
状態を断定する書き方は、外に出たときに問題になります。「〜と語られた」「〜の可能性を念頭に置いた」のように、根拠と留保を含む形で書いてください。
外に出せる書き方

読むのが自分だけとは限らない前提で書きます。書き方を変えるだけで、後から使える記録になります。
- 事実と解釈を行を分けて書く
- 相談者の言葉は、そのまま短く引く
- 自分の感想や評価は書かない
- 断定を避け、根拠を添える
- 第三者の名前は必要最小限にする
感想を書かない
「疲れているように見えた」は観察ですが、「大変そうで気の毒だった」は感想です。感想は記録の役に立たず、外に出たときに問題になります。観察と対応だけを残してください。
行を分けるだけで読みやすくなる
事実と解釈が同じ段落に混ざっていると、どこまでが語られたことでどこからが自分の見方なのかが分かりません。行を分けて書くだけで、読む側の負担が大きく下がります。見出しを付ける必要はなく、順番を固定しておけば足ります。
第三者の情報は最小限にする
相談の中には、家族や職場の人の情報が含まれます。記録に必要な範囲を超えて書かないでください。関係性だけを書き、特定できる情報は避ける形が基本です。
編集部で取材の記録を扱ってきた実感として、後から使える記録には共通の形があります。事実と解釈が分かれていること、項目の順番が毎回同じであること、そして短いことです。長い記録は書くのに時間がかかるうえ、読み返されません。続く記録は、必ず短い形をしています。
続けられる形にする

記録は、続かなければ意味がありません。書く時間と手順を先に決めてください。
▼ 運用で決めておく項目
- □ 書く時間を面談の枠に含めている(終了後十分など)
- □ 項目の順番を固定している
- □ 一回の分量の目安を決めている
- □ 手書きか入力かを決めている
- □ 書けなかった回の扱いを決めている
- □ 見返す時期を決めている
書く時間を枠に含める
面談を続けて入れると、記録は後回しになり、その日のうちに書けません。終了後の十分を枠として確保しておくと、記憶が新しいうちに残せます。
形式は変えない
その日によって書き方を変えると、後から並べて読めません。手書きか入力かも含めて一度決めたら、半年は同じ形で続けてください。並べて読める記録は、一件ずつの記録より多くのことを教えます。
書けなかった回の扱いを決めておく
どうしても書けない日はあります。そのときは日時と主訴だけ残す、と決めておいてください。空白の回を作らないことのほうが、内容の充実より重要です。
保管と扱いを決める

記録には個人の情報が含まれます。保管の形を決めておいてください。
保管を決めるときの順番
- 保管する場所を一つに決める
- 他人が見られない状態にする(施錠、機器の保護)
- 保管する期間を決める
- 期間を過ぎたものの処分方法を決める
場所を一つに決める
紙と入力の両方に散らばっていると、どこに何があるか分からなくなります。形式はどちらでも構いませんが、一つに集めてください。
持ち歩かない形にする
紙の記録を移動中に持ち歩くと、紛失の可能性が生まれます。面談場所と保管場所が同じであることを前提に、持ち出さない運用にしてください。どうしても必要な場合は、個人が特定できる情報を外した控えを使います。
期間と処分方法を決めておく
保管の期間について、所属する団体や資格の定めがある場合はそれに従ってください。定めがない場合も、自分で期間を決めて処分の方法まで含めておくと、際限なく残り続ける状態を避けられます。
扱いの説明を相談者にも伝える
記録を取っていること、どのように保管しているかを最初の回に伝えておくと、後から問われることがなくなります。伝えること自体が安心の材料にもなります。
判断に迷う内容が出たとき

記録に残すかどうか迷う内容は必ず出てきます。
迷ったら事実だけ残す
扱いが難しい内容ほど、解釈を書き込みたくなります。そういう回ほど、語られた事実と自分がした対応だけに絞ってください。判断は後から加えられますが、事実は思い出せません。
扱えない内容だと判断したことも残す
自分の範囲ではないと判断して紹介先を案内した回も、その判断と案内した先を記録に残してください。何を扱い、何を扱わなかったかの記録は、後から自分の範囲を確認する材料になります。
法令や指針に関わる部分は専門家に確認する
記録の保管期間、開示の求めへの対応、第三者への提供の可否。こうした点は、所属する団体の指針や、弁護士など該当分野の専門家に確認してください。本記事で扱うのは、自分の実務を整理するための考え方までです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 面談記録はどのくらいの分量が必要ですか。
A. 続けられる短さが優先です。長い記録は書くのに時間がかかり、読み返されません。日時、主訴、状況、見立て、対応、次回の六項目を数行ずつで足ります。
Q2. 記録に自分の感想は書いてよいですか。
A. 書かないでください。「疲れているように見えた」は観察ですが、「大変そうで気の毒だった」は感想です。感想は記録の役に立たず、外に出たときに問題になります。
Q3. 記録を書く時間が取れません。
A. 面談を続けて入れると後回しになります。終了後の十分を枠として確保してください。どうしても書けない日は、日時と主訴だけ残すと決めておくと、空白の回を作らずに済みます。
Q4. 保管期間はどのくらいにすればよいですか。
A. 所属する団体や資格に定めがある場合はそれに従ってください。定めがない場合も自分で期間を決め、処分の方法まで含めて決めておくと、際限なく残り続ける状態を避けられます。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
