親について話すのは責めるためではなく、自分に何が残っているかを見るためです。評価を下す場ではないと分かると、話しやすくなります。
話し始めると、親を悪く言っているような気持ちになって口が止まる。この抵抗は珍しくなく、多くの場合、目的の誤解から来ています。
MIKATA編集部に届く声を整理すると、親について話すことをためらう人の多くが、「親を責める話」だと受け取っていました。しかし相談で扱うのは親の評価ではなく、そこで身についた自分の反応の型です。目的が分かると、同じ内容でも話しやすさが変わります。
罪悪感の中身を分ける
| 感じ方 | 背景 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 悪口を言っている気がする | 評価する場だと思っている | 目的を確認する |
| 育ててもらったのに | 恩と困りごとを同じ天秤に載せている | 分けて扱う |
| 親も大変だったはず | 相手の事情を先に引き受けている | 順番を戻す |
| 言ったら関係が壊れる | 本人に伝わると考えている | 伝わらないと確認する |
4番目は事実として確認できます。相談内容は守秘義務で守られ、本人の同意なく第三者に伝えられることはありません。家族であっても同じです。
例外は、本人や他者の生命に関わると判断される場合に限られます。その場合も、本人に説明したうえで進むのが原則です。
同居していても、相談していること自体を伝える必要はありません。オンラインなら、外出の説明も要りません。
知られずに受ける方法は複数あります。
郵便物の扱いも、申し込み時に指定できます。
恩と困りごとは別に扱える
感謝していることと、いま困っていることは同時に成立します。どちらかを選ぶ必要はありません。両方を並べたまま話して構いません。
「感謝しているけれど、この部分は苦しかった」。この形で話す人は多くいます。矛盾しているわけではありません。
親を悪者にする作業ではない
相談で親を断罪することはありません。誰が悪いかを決める場ではなく、いま何が起きているかを見る場です。その前提が伝わると、抵抗はかなり小さくなります。
親の側にも事情があった、という理解と、自分がつらかった、という事実は両立します。どちらかを先に認めないと話せない、というものではありません。
順番を求められることもありません。話したい順で構いません。

何を話すのか
相談で扱えるのは、その場にいる本人の考えと選び方だけです。親を変える方法も、親の意図を確かめることもできません。扱うのは、その関係のなかで自分が何を身につけ、いま何に効いているか。親そのものは対象ではありません。
- どんな場面が繰り返しあったか(事実)
- そのとき自分がどうしていたか(対応)
- いまも同じ形が出ていないか(現在)
- 変えたいのはどの部分か(目的)
1番目は事実の説明であって、評価ではありません。「怒鳴られたときは黙っていた」は、親を責める言葉ではなく、自分が何をしていたかの記述です。
評価の言葉が出てしまっても構いません。そのまま話して、あとで整理すれば足ります。
最初から整った言い方をする必要はありません。
3番目が本題
扱いたいのは過去そのものではなく、いまも続いている反応です。上司の顔色をうかがう、断ると相手が離れる気がする。その形の由来を見る作業になります。
由来が分かると対応が変わる
いまの反応が「その場を切り抜けるために身につけたもの」だと分かると、自分を責める言い方が減ります。必要だったから身につけた、という見方に変わります。
いまの環境では不要になっている場合、そこを更新する作業になります。過去を変える作業ではありません。
扱えるのは、いまの反応と選び方だけです。その範囲だから、結果を確認できます。
確認できるものを扱うほうが、進みが早くなります。
相手を変えようとするより、消耗も小さくなります。
話せないときの進め方
▼ 言いにくいときに使える伝え方
- □ 「悪く言っているようで話しにくいのですが」と先に言う
- □ 「事実だけ話します」と断って進める
- □ 触れたくない部分は「そこは話したくない」で足りる
- □ 今日は浅く扱いたい、と伝える
- □ 書いたものを見せる形にする
1番目を最初に言うだけで、抵抗そのものを扱う材料になります。なぜ言いにくいのかが、そのまま関係の形を示していることがあります。
全部を話さなければならない決まりはありません。話せる範囲から始めて、時期が来れば扱えることもあります。
感情が動いたら止めていい
話しているうちにつらくなったら、その場で止められます。無理に最後まで話す必要はありません。
次の回に持ち越せます。1回で全部を扱う必要はありません。
止めたことで進まなくなるわけでもありません。止められる場だと分かること自体が、話しやすさにつながります。

親を許す必要はない
相談の目的は和解ではありません。
- 許す・許さないを決める場ではない
- 関係を修復するかどうかは本人が決める
- 距離を取る選択も扱える
- 会わないという判断も尊重される
「許したほうが楽になる」と言われるのがつらい場合、そう伝えて構いません。扱う範囲は本人の意向に沿って決められます。
距離を取ることに罪悪感が出る場合、その罪悪感自体を扱えます。距離を取るかどうかより、そこで消耗している状態のほうが先に扱う対象になります。
周囲から「親なんだから」と言われて苦しくなる場合も、その言葉との距離の取り方を扱えます。
周囲の言葉は、その人の経験から出ているだけで、こちらの状況を知っているわけではありません。
相談の場は、その前提を共有しなくていい数少ない場所です。
進め方の目安
▼ 何回かに分けて進む
- 1〜2回目:いま困っている場面を話す
- 3回目前後:繰り返しの形が見えてくる
- その後:由来を扱うか、いまの対応を変えるかを選ぶ
- 節目:距離の取り方や、関わり方を決める
順番として、いまの困りごとが先です。生い立ちから順に話す必要はありません。いま効いている部分だけを扱えば足ります。
扱う深さも選べます。由来まで踏み込まず、いまの対応を変えるだけで進むこともあります。
深く扱うことが常に良いわけではありません。生活が回る状態を保つほうが優先される時期もあります。
どこまで扱うかは、毎回の相談で選び直せます。
今日は浅く、次は深く、という進み方でも構いません。
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こういう状態のときは相談先が違う
次の場合は、扱う場所が変わります。
- 身体的な危害を受けている、または受けたことがある
- 経済的な支配や、強い干渉が続いている
- 眠れない・食べられない状態が続いている
- 介護や金銭の問題が具体的に発生している
上2つは、公的な相談窓口が扱います。3番目は医療機関を先に検討してください。4番目は自治体の窓口や専門家が扱う内容です。
出典:厚生労働省「こころの耳」相談窓口案内
MIKATAでは、家族関係を扱う相談先を探せるようにしています。扱う範囲を明記している相談先を選べば、話す前に「どこまで扱えるか」が分かります。
罪悪感があるまま話し始めて構いません。その罪悪感自体が、扱う価値のある材料になっています。
言いにくさの理由を話すところから始めれば、それだけで1回分が成立します。
多くの人が、そこから始めています。
親のことを話すのは、親を裁くためではありません。いまの自分がどう動いているかを見て、変えられる部分を探す作業です。
その作業に、親を悪く言う必要はありません。事実を並べるだけで足ります。
そこから先は、相談のなかで整理されていきます。うまく話せなくても構いません。
言葉にする作業も、相談の一部です。
整った話を用意する必要はありません。


よくある質問(FAQ)
Q1. 親の悪口を言っているようで話せません。
A. 扱うのは親の評価ではなく、そこで身についた自分の反応の型です。「悪く言っているようで話しにくい」と先に伝えて構いません。
Q2. 話した内容が親に伝わりませんか?
A. 本人の同意なく第三者に伝えられることはありません。家族であっても同じです。
Q3. 親を許さないといけませんか?
A. 相談の目的は和解ではありません。距離を取る選択も、会わない判断も扱えます。
Q4. 生い立ちから順に話すべきですか?
A. いま困っている場面から始めて構いません。いま効いている部分だけを扱えば足ります。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
