カウンセラーに嘘をついてしまうのは不誠実だからではなく、話す条件が整っていないからです。整え方を順に見ます。
お金を払って通っているのに、肝心なことを話せていない。聞かれたことに合わせて、本当ではない答えを返してしまう。そのあとで自己嫌悪になる。この記事では、本当のことが言えなくなる理由と、言い直す方法、そして話せる条件の作り方を整理します。
本当のことが言えなくなる理由

嘘をついてしまう背景には、いくつかの決まった理由があります。自分を責める前に、どれに当たるかを見てください。
よく思われたい気持ちが働く
カウンセラーに対しても、だめな人だと思われたくないという気持ちは働きます。努力していると答えてしまう、良くなっていると答えてしまう。相手が専門家であっても、人に評価される場面であることは変わりません。
相手をがっかりさせたくない
提案されたことをやれていないとき、そのまま言うと相手の労力を無駄にしたように感じます。気を使ってやったことにしてしまうことがあります。
話すと壊れそうで触れられない
いちばん重い内容ほど、口に出すと確定してしまう感じがあります。まだ確定させたくないとき、人は別の話題で時間を埋めます。
聞かれ方に合わせてしまう
質問の形によっては、答えが誘導されることがあります。「少し楽になりましたか」と聞かれると、違っていても肯定しやすくなります。こちらの問題だけとは限りません。
MIKATA編集部に届く相談を読むと、カウンセラーに本音を言えないという相談は「嘘をついてしまう自分が問題だ」という形で書かれています。しかし内容を読むと、話せない条件がそろっている場面がほとんどです。扱うべきは本人の誠実さではなく、話せる条件のほうだと分かります。
言えない内容を四つに分ける
何が言えていないかで、対処が変わります。
| 言えない内容 | 背景 | 扱い方 |
|---|---|---|
| やれていないこと | がっかりさせたくない | できなかった事実だけ伝える |
| 良くなっていないこと | 評価されたくない | 変化がないと伝えてよい |
| いちばん重い話題 | 確定させたくない | 触れずに置くと先に伝える |
| カウンセラーへの不満 | 関係が壊れそう | 伝えることが目的の回を作る |
やれていないことは事実だけ伝えればよい
提案されたことができなかった場合、理由を説明する必要はありません。「できませんでした」だけで足ります。できなかったこと自体が次の材料になります。
良くなっていないことは伝えてよい
通っているのに変化がないと、自分の努力不足のように感じられます。しかし変化がないという情報は、進め方を見直すために必要なものです。「今のところ変わっていません」とそのまま伝えて構いません。
重い話題は触れないと先に言う
いちばん重い内容をいま話す必要はありません。「その話題は今日は置いておきたい」と先に言っておけば、別の話で埋める必要がなくなります。
不満は伝えてよい
進め方が合わない、話が早すぎる、分かってもらえていない気がする。こうした不満を伝えることは関係を壊す行為ではありません。むしろ、伝えられる関係になっているかどうかがそのカウンセリングの質を決めます。
言い直す方法

すでに違うことを言ってしまった場合も、あとから直せます。
- 次の回の冒頭で、前回の話に戻ると伝える
- 「前回、実は違うことを言いました」と事実だけ言う
- なぜそう言ったかは、話せる範囲でよい
- 訂正した内容を、その回で扱ってもらう
- 毎回の冒頭に、前回の訂正の時間を作ってもらう
冒頭に言うと戻れる
話が進んでからでは、戻すきっかけがなくなります。始まってすぐに「前回のことで訂正したいことがあります」と言えば、その回で扱えます。
書いて渡す方法もある
口に出せない場合は、書いたものを渡す方法があります。その場で読んでもらう形でも、先に送る形でも構いません。話す形式にこだわる必要はありません。
理由は話せる範囲でよい
なぜ違うことを言ったのかを説明できないこともあります。「言えませんでした」で構いません。理由まで求められた場合も、分からないと答えてよい場面です。
MIKATA編集部でこの話題を調べたところ、上位に出てくるのは相談の場に投稿された個人の質問が中心で、専門的に答えている記事はほとんどありませんでした。つまり、困っている人は多いのに扱われていない領域だということです。言えないまま抱えている人が相当数いると考えられます。
話せる条件を作る

言えるかどうかは意志ではなく、条件で決まります。
▼ 話せる条件の確認項目
- □ 最初に「話したくないことは話さなくてよい」と確認している
- □ 答えたくない質問に答えなくてよいと分かっている
- □ 話す順番を自分で決められる
- □ 沈黙のあいだ待ってもらえる
- □ 訂正できる時間が用意されている
- □ 記録の扱いを聞いている
話さない権利を先に確認する
話さなくてよいと分かっていれば、嘘で埋める必要がなくなります。「それは今日は話したくないです」と言えることが、本当のことを言える条件です。最初の回に確認しておいてください。
話す順番を自分で決める
聞かれた順に答えなければいけない決まりはありません。「先にこちらを話したいです」と言って構いません。順番を自分で決められると、答えを合わせる必要がなくなります。
記録の扱いを聞いておく
話した内容がどこに残るのかが分からないと、話せる範囲が狭くなります。記録を取っているか、どこに保管しているかを聞いて構いません。
それでも言えないときの見方

条件を整えても、言えない内容は残ります。
言えないまま進めるときの順番
- 言えていない内容があること自体を伝える
- 内容ではなく「言えない話題がある」とだけ言う
- 話せる時期が来るまで、他の話題を進める
- 何回か通っても言えないなら、相手を変えることも検討する
言えないことがあると伝えるだけでよい
内容を言わなくても、「触れられない話題がある」と伝えることはできます。それが伝わっていれば、カウンセラーはそこを避けて進められます。隠していることを隠し続ける負担が減ります。
相手を変える判断もある
何回通っても話せる感じがしない場合、相性の問題であることがあります。変えることは失礼ではありません。話せないまま続けるほうが、時間と費用の損失が大きくなります。
自分を責める必要はない

嘘をついてしまったことを誠実さの問題として扱うと、次も言えなくなります。
守るための反応として起きている
本当のことを言えないのは、自分を守るための働きです。何かを守る必要があるから出ている反応で、その必要がなくなれば減っていきます。責めても、必要はなくなりません。
言えなかった回数を数えない
何回言えなかったかを数えると、その数字が新しい負担になります。数えるなら、訂正できた回数のほうを数えてください。
訂正できた回を評価する
言えなかった回ではなく、あとから訂正できた回を数えてください。訂正できたということは、その関係で言える範囲が広がったということです。この方向で積み上がります。
危険が関わる内容は別
自分や誰かを傷つける考えがある場合は、言えるかどうかに関わらず早く伝える必要があります。その場で言えない場合は、書いたものを渡す方法もあります。公的な相談窓口も利用できます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. カウンセラーに嘘をついてしまうのは、私が不誠実だからでしょうか。
A. 違います。よく思われたい、がっかりさせたくない、話すと確定してしまう。こうした理由で起きる、自分を守るための反応です。責めても必要はなくなりません。
Q2. 提案されたことをやれていないとき、どう言えばよいですか。
A. 理由を説明する必要はありません。「できませんでした」だけで足ります。できなかったこと自体が、次に何を扱うかの材料になります。
Q3. すでに違うことを言ってしまいました。
A. 次の回の冒頭で「前回、実は違うことを言いました」と事実だけ伝えてください。話が進んでからでは戻すきっかけがなくなるため、始まってすぐに言うのが確実です。
Q4. 何回通っても本当のことが言えません。
A. 相性の問題であることがあります。相手を変えることは失礼ではなく、話せないまま続けるほうが時間と費用の損失が大きくなります。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
