不安で落ち着かないときの呼吸は、深く吸うのではなく「吐く時間を吸う時間より長くする」のが要点です。場所を選ばず、1分から使えます。
動悸がする、そわそわして座っていられない。そんなときに「深呼吸して」と言われても、大きく吸い込むほど苦しくなった経験はないでしょうか。
MIKATA編集部に届く不安の相談で、呼吸法を試したという人の話には偏りがあります。うまくいかなかったと話す人の多くが「大きく吸うこと」に集中していたのに対し、続いている人は「吐き切ること」を意識していました。同じ呼吸法でも、どちらに重心を置くかで体感がまるで変わります。
吸うより吐く。順番を逆にするだけで変わる
不安が強いとき、呼吸は自然と浅く速くなります。この状態で大きく吸い込もうとすると、肺に空気が残ったまま吸うことになり、かえって息苦しさが増します。
先にやることは、吐くことです。吐き切れば、吸う動作は勝手に起きます。意識するのは出ていく息だけで構いません。
- 口をすぼめて、細く長く吐く
- 吐き終わりで一瞬止まり、体が吸いたがるのを待つ
- 吸うときは鼻から、自然に入ってくる分だけ
- 回数より、吐く時間の長さを優先する

場面別に使い分ける3つのやり方
同じ呼吸法でも、場面によって使いやすい形が違います。人前で使えるものと、家でしか使えないものを分けておくと実用的です。
人前で使う——気づかれない呼吸
鼻から4秒吸って、鼻から8秒かけて吐く。口を動かさないので、会議中や電車の中でも使えます。3回ほどで手先の感覚が変わってきます。
ひとりのとき——ため息を意図的に使う
口から「はぁー」と声が出るくらい長く吐き切ります。ため息は本来、体が緊張を抜くために出しているもの。意識的にやって構いません。
眠る前——横になったまま
仰向けで片手をお腹に置き、手が下がるのを感じながら吐きます。数を数えるより、手の動きに注意を向けるほうが続きます。
▼ うまくいかないときの確認
- □ 吸うことに意識が向いていないか
- □ 肩が上がっていないか。動くのはお腹まわり
- □ 回数をこなそうとしていないか
- □ 苦しくなるまで我慢していないか
- □ 静かな場所でしかやっていないか
なぜ吐くほうが効くのか
息を吐いているあいだ、体は休む方向の働きが優位になります。逆に吸っているあいだは、動く方向の働きが強まります。つまり吐く時間を長くすることは、休む時間を長くすることにあたります。
これは気持ちの持ちようではなく、体のしくみの話です。だからこそ、落ち込んでいる日でも、やる気がない日でも同じように使えます。
なお、呼吸法は不安を消す道具ではありません。強い波が来たときに、その高さを少し下げて、考えられる状態まで戻すためのものです。期待の置き方を間違えると「効かない」と感じてしまいます。

続けるための、置き場所の決め方
呼吸法が続かない理由は、たいてい「必要なときに思い出せない」ことです。不安が強いときほど、道具の存在を忘れます。
- 既にある習慣にくっつける:歯を磨いたあと、電車に座ったとき
- 1回の長さを短くする:3呼吸で終わりにする
- 落ち着いている日にもやる:平常時に練習した動作しか、非常時には出てこない
3つ目が特に大事です。不安が強い日だけ試すと、うまくできない体験ばかりが積み重なって、使わなくなります。
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呼吸法で対処しないほうがいい場面
呼吸法は手軽ですが、これで抱え込まないほうがいい状態もあります。
- 息苦しさや動悸が、不安のない場面でも起きる
- 胸の痛みをともなう
- 眠れない日が2週間以上続いている
- 食欲や体重の変化が続いている
- 日常の動作ができない日がある
こうした場合は、呼吸の工夫で乗り切ろうとせず、医療機関に相談してください。体の病気が背景にあることもあり、自己判断で様子を見る時間が長引くほど回復に時間がかかります。
どこに相談すればいいかわからないときは、厚生労働省の情報サイトに相談先の一覧がまとめられています。出典:厚生労働省「こころの耳」

呼吸だけで足りないと感じたら
呼吸法は、その場をしのぐための手当てです。不安の元になっている出来事や考え方まで扱うものではありません。
同じ不安が繰り返し戻ってくるなら、何が引き金になっているかを言葉にする作業のほうが効きます。書き出すのが向く人もいれば、誰かに話しながら整理するほうが早い人もいます。
- 引き金を記録する:いつ、どこで、直前に何があったか
- 書いて整理する:紙に出すだけで輪郭がはっきりする
- 話して整理する:話を聞くことを専門にしている相談先を使う
ひとりで抱える時間が長いほど、不安は形を変えて大きくなりがちです。手当てと並行して、整理する場を持っておくと戻りが早くなります。


よくある質問(FAQ)
Q1. 何回やればいいですか?
A. 回数より、吐く時間が吸う時間より長いかどうかが要点です。目安としては3〜6回。それ以上続けて苦しくなるようなら、無理に続けず一度やめて構いません。
Q2. やっている最中に、めまいがしました。
A. 吸いすぎているか、力んで長く止めすぎている可能性があります。呼吸の量を増やそうとせず、いつもより少し長く吐くだけに留めてください。症状が繰り返す場合は中止して医療機関に相談してください。
Q3. 不安が強いときほど、うまくできません。
A. 平常時に練習していない動作は、不安が強い場面では出てきません。落ち着いている日に短く繰り返しておくと、必要なときに使えるようになります。
Q4. 呼吸法だけで不安は治りますか?
A. その場の高ぶりを下げる手当てであって、原因を扱うものではありません。同じ不安が繰り返すなら、引き金を整理する作業を並行してください。状態が続く場合は医療機関や相談先にもつないでください。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
