吐く時間を吸う時間より長くすると、体の側から緊張がほどけます。やり方と続け方を置きます。
落ち着こうと思っても考えが止まらない。そんなときに手をつけやすいのが呼吸です。この記事では、吐く時間を長くする呼吸法のやり方と、続けるための置き方を整理します。
MIKATA編集部に届く相談では、この方法について「やってみたが変わらなかった」という書き方が出てきます。多くは一度だけ試して、その場で効果を判定している形です。
吐く時間を長くすると変わる理由

気持ちを変えようとするより、体の動きを変えるほうが手をつけやすいところです。
吸う動作は力が入りやすい
息を吸うときは肩や胸に力が入ります。緊張しているときほど吸う側が短く速くなります。その状態でもっと吸おうとすると、力がさらに入ります。
吐く動作は力が抜けやすい
吐くときは体の力が抜ける方向に働きます。その時間を長く取ると、抜ける側の時間が増えることになります。
数えることで考えが止まる
秒数を数えているあいだは、頭が数に向きます。考えを止めようとするより別のことをするほうが早く進みます。
道具が要らない
場所や時間を選ばず、机の前でも移動中でもできます。始める手間がほとんどかかりません。
その場で確かめられる
やったあとに肩の力が抜けたかどうかはすぐ分かります。続けるかどうかの判断がしやすい方法です。
失敗しにくい
うまくできたかどうかを測る基準がありません。秒数だけ守れば形になります。
他のことと組み合わせられる
歩いているとき、待っているとき。他の動作と同時にできます。時間を別に取らなくても生活の中に入れられます。
回数より長さが効く
たくさんやることより、一回の吐く時間をしっかり取るほうが変化が出ます。急いで数を重ねると吐く側が短くなります。
効かない場面もある
強い不安が続いているときや体調が関わっているときは、呼吸だけでは追いつきません。その線引きも先に知っておきます。
やり方と秒数の決め方

秒数は自分の楽な長さで決めます。
基本の形
鼻から四秒吸って、口から八秒かけて吐く。これを四回。吐く側を吸う側の二倍にするのが目安です。秒数そのものよりこの比率のほうが効きます。
苦しいときは短くする
八秒が長ければ三秒吸って六秒吐く形でも構いません。比率が保たれていれば働きます。
| 場面 | 吸う | 吐く | 回数 |
|---|---|---|---|
| 机の前で | 4秒 | 8秒 | 4回 |
| 歩きながら | 4歩 | 8歩 | 10回 |
| 寝る前 | 4秒 | 8秒 | 10回 |
| 苦しいとき | 3秒 | 6秒 | 4回 |
| 人前で | 鼻から静かに | 鼻から長く | 3回 |
| 朝の支度中 | 4秒 | 8秒 | 4回 |
人前では鼻から吐く
口から吐くと音が出ます。鼻から静かに長く吐けば周りに気づかれません。
歩きながらは歩数で数える
秒を数えにくい場面では歩数に置き換えます。四歩で吸って八歩で吐く形なら、移動中でもそのまま続けられます。
回数を増やしすぎない
長く続けるとめまいが出ることがあります。四回から始めて、慣れてから増やします。
続けるための置き方

思い出したときにやる形だと続きません。
編集部で、二週間同じ手順を記録しました。落ち着いた場面とそうでない場面を並べると、差が出たのは回数ではなく吐く時間の長さでした。吸う時間と同じ長さで吐いた回は変化が小さく、吐く側を長く取った回は肩の力が抜けやすくなっていました。
呼吸法を生活に置く手順
- やる場面を一つ決める(例:席に座った直後)
- 秒数を決める(吸う4・吐く8)
- 四回で一区切りにする
- 終わったら肩の力の抜け具合を一行残す
- 二週間続けてから、効いた場面を見る
- 効いた場面に絞って残す
場面に結びつける
時間で決めるより動作に結びつけるほうが思い出せます。席に座ったら、電車に乗ったら、布団に入ったら。毎日必ず通る動作を選んでおくと、思い出す手間が要らなくなります。
落ち着く前から始める
不安が大きくなってからでは数える余裕がありません。何ともない時間にやっておくと、必要なときに形が出てきます。
一行だけ記録する
効いたかどうかをその場で書き留めます。長く書く必要はなく、抜けた・変わらない、の二択で足ります。
二週間は判定しない
一度で決めると多くは効かない側に入ります。二週間分を並べてから判断します。
寝る前は回数を増やす
横になってからならめまいの心配が小さく、十回ほどまで続けられます。眠りに入る前の置き場所として使いやすい時間です。
効いた場面だけ残す
すべての場面で効くわけではありません。効いた場面に絞ると、続ける手間が減ります。
記録して自分の形を作る

合う秒数と場面は人によって違います。
▼ 二週間のチェック
- □ やる場面を一つ決めた
- □ 秒数を決めた
- □ 吐く側を吸う側より長く取った
- □ 四回で区切った
- □ 終わったあとを一行残した
- □ 二週間分を並べて見た
効いた場面を並べる
どの場面で抜けたと書いたかを並べると、自分に合う使いどころが見えてきます。
秒数を変えて比べる
四秒と八秒で変化が小さいなら、三秒と六秒、五秒と十秒を試して比べます。
時間帯で見る
朝と夜で効き方が違うことがあります。どちらに置くかを記録から決めます。
姿勢もあわせて見る
同じ秒数でも、背中が丸まっているときは吐きにくくなります。座り方を変えるだけで変化が出ることがあります。
効かない場面も残す
効かなかった場面を書き留めておくと、別の方法が要る場面が分かります。効かない場面があること自体は問題ではありません。
かえって落ち着かない使い方

やり方を間違えると苦しくなります。
深く吸おうとする
大きく吸うことに力を使うと、肩に力が入ります。吸う側は軽くて構いません。
長く続けすぎる
何十回も続けるとめまいや手のしびれが出ることがあります。四回から十回までにとどめます。
効果をその場で採点する
落ち着いたかどうかを毎回厳しく判定すると、できていない確認を繰り返すことになります。
不安が強いときだけ使う
大きくなってから始めても数える余裕がありません。普段からやっておく形にします。
これだけで済ませようとする
眠れない、食べられないといった状態まで呼吸法で扱おうとすると、必要な支援が遅れます。
やる場面を増やしすぎる
いくつもの場面に置くと、できなかった場面が気になります。一つに絞って続くことを先に作ります。
人と比べる
効き方には差があります。他の人が落ち着くと聞いても、自分に合わなければ別の方法を探して構いません。合う方法は一つではありません。
呼吸法で足りないときは
方法の問題ではない場合があります。
生活に影響が出ているとき
眠れない日が続く、食欲が戻らない、外に出られない。そうした状態が続くときは、呼吸法で抱えず、医療機関や相談窓口を先に使ってください。
体の症状が出ているとき
動悸や息苦しさが繰り返し起きるときは、体の側の確認が先になります。自己判断で続けないでください。
合わなければやめてよい
二週間試して変化が無ければ、別の方法に移って構いません。続けられないことを問題として扱う必要はありません。
他の方法と組み合わせる
体を動かす、寝る時間を決める。呼吸法だけに頼らず並べて使うほうが支えが増えます。
話す場所を持っておく
身近な人には言いづらいことがあります。自治体の相談窓口やオンラインのカウンセリングなど、利害のない相手が使えます。
心の整え方を、無理のない形でお届けしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 呼吸法はどのくらいの秒数がいいですか。
A. 鼻から四秒吸って口から八秒かけて吐く形が目安です。吐く側を吸う側の二倍にするのがポイントで、八秒が長ければ三秒と六秒でも比率が保たれていれば働きます。
Q2. 何回やればいいですか。
A. 四回から始めてください。長く続けるとめまいや手のしびれが出ることがあるので、慣れても十回までにとどめます。
Q3. やってみても落ち着きませんでした。
A. 一度で判定すると多くは効かない側に入ります。編集部で二週間記録したところ、差が出たのは回数ではなく吐く時間の長さでした。二週間分を並べてから判断してみてください。
Q4. 不安が強いときに使えますか。
A. 大きくなってから始めても数える余裕がありません。何ともない時間にやっておくと、必要なときに形が出てきます。眠れない・食べられないといった状態が続くときは、呼吸法で抱えず医療機関や相談窓口を先に使ってください。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
