否定してしまうのは謙虚さではなく、受け取り方を知らないだけです。練習の始め方を整理します。
「そんなことないです」と反射的に返してしまう。言ってくれた相手に悪いと思いながら、次も同じように打ち消してしまう。この記事では、褒め言葉を否定してしまう仕組みと、受け取る練習の始め方を整理します。
褒められると否定してしまう理由

性格の問題ではなく、身についた反応です。
謙遜が習慣になっている
褒められたら打ち消すのが礼儀だと教わってきた人は多くいます。考える前に言葉が出るため、自分では選んでいません。
自分の評価と合わない
自分では足りないと思っている部分を褒められると、受け取ると嘘になる気がします。そこで打ち消す言葉が出ます。
期待されるのが怖い
受け取ると次も同じようにできると思われる気がして、先に下げておこうとします。
何と返せばいいか分からない
否定以外の返し方を使ったことがないと、その場で出てきません。言葉を持っていないだけのことがあります。
褒められる場面に慣れていない
回数が少ないと毎回身構えることになります。慣れの問題である部分も小さくありません。
否定したあとに落ち込む
打ち消したあとで相手に悪いことをしたと感じ、その場面を思い返します。褒められること自体が重くなっていきます。
相手の意図を疑ってしまう
何か頼みたいのではないか、気を使っているだけではないか。そう考えると受け取る前に警戒が働きます。多くの場合、そこまでの意図はありません。
MIKATA編集部に届く相談を読むと、褒め言葉についての困りごとは「嬉しくない」ではなく「嬉しいのにそう言えない」という形で書かれています。気持ちと言葉がずれている状態です。
否定の中身を分ける
同じ「そんなことない」でも、動いているものが違います。
| 動いているもの | 起きていること | 先にできること |
|---|---|---|
| 習慣 | 考える前に言葉が出る | 返す言葉を決めておく |
| 自己評価とのずれ | 受け取ると嘘になる感覚 | 事実だけ受け取る |
| 期待への不安 | 次も求められる怖さ | 一回分として受け取る |
| 言葉が無い | 他の返し方を知らない | 礼だけ返す形を覚える |
習慣なら言葉を変えるだけで済む
反射で出ているなら、考え方を変える必要はありません。先に返す言葉を決めておけば、そちらが出るようになります。
事実だけ受け取る
「よくやっている」と言われて全部を認める必要はありません。相手がそう見た、という事実だけを受け取れば足ります。
一回分として受け取る
今回のことを褒められただけで、次を約束したわけではありません。先の話と切り離すと受け取りやすくなります。
言葉を持っていないだけのこともある
自己評価の問題ではなく、単に返す言葉を持っていないことがあります。その場合は一言決めるだけで解決します。
記録して場面を見る
どんな場面で打ち消しているかを残しておくと、相手や内容に偏りがあることが分かります。
受け取る練習の始め方

気持ちを変えるより、言葉から変えます。
- 返す言葉を一つ決めておく
- 否定の言葉を足さない
- その場で説明しようとしない
- 言われた内容を書き留める
- 自分でも同じ言葉を使ってみる
礼だけ返す
「ありがとうございます」。これだけで十分に成立します。そのあとに「でも」を足さないでください。足した時点で打ち消しになります。
説明しようとしない
「たまたまです」「運がよかっただけで」。背景を説明すると否定と同じ働きをします。その場では説明しなくて構いません。
書き留める
言われた言葉をそのまま残しておくと、後から読み返せます。その場で受け取れなくても、あとから受け取ることはできます。
自分でも使ってみる
人を褒めるときに同じ言葉を使ってみると、受け取る側の感覚が分かります。打ち消されたときの気持ちも見えてきます。
編集部で返し方を二通り用意して比べました。謙遜の言葉を返す形と、礼だけを返す形です。後者のほうが会話が短く終わり、気まずさも残りませんでした。打ち消すと相手が言い直すことになるためだと考えられます。
その場で使える形

場面ごとに決めておくと迷いません。
▼ 返すときに確認すること
- □ 礼の言葉から始めている
- □ 「でも」を足していない
- □ 背景を説明していない
- □ 相手を持ち上げ返していない
- □ 長く返そうとしていない
- □ 言われた内容を覚えている
持ち上げ返さない
「そちらこそ」と返すと、話がそれて受け取らずに済ませてしまいます。自分の分を受け取ってから、別の話として伝えてください。
短く返す
長く返そうとすると言い訳の形になります。一言で終えるほうが自然に伝わります。
間があいても構わない
すぐ返せずに少し間があいても問題ありません。慌てて打ち消すより、一拍おいて礼を言うほうが相手にも伝わります。
嬉しいと言ってよい
「嬉しいです」は自慢にはなりません。相手にとっても言ってよかったと思える返事になります。
相手の目を見なくてよい
受け取ることに慣れていないと、目を合わせるだけで言葉が出なくなります。うつむいたままでも礼を言えれば足ります。
受け取れないままのとき

練習してもうまくいかない日があります。
受け取れなかったときの順番
- 否定してしまったことを責めない
- 言われた内容だけ書き留める
- 後から読み返す
- 次に使う言葉を一つ決める
- 同じ場面が来たら試す
責めないで終える
打ち消してしまった日を反省し続けると、褒められること自体が重くなります。言葉を一つ決めてそこで終えてください。
あとから受け取る
その場で受け取れなくても、書き留めた言葉を落ち着いたときに読むと入ってくることがあります。
次に使う言葉を決める
反省の代わりに、次に使う言葉を一つ決めてください。考えることが行動に変わります。
つらさが続くときは相談する
自分を認められない状態が続き、眠れない、食事が取れないといった変化が二週間以上続く場合は、医療機関や公的な相談窓口に伝えてください。本記事は情報提供を目的としたもので、診断を行うものではありません。
受け取れると変わること

自分のためだけの話ではありません。
相手が言いやすくなる
打ち消されると言った側も気まずくなります。受け取ると、次も言ってもらえます。
自分の材料が残る
受け取った言葉は覚えていられます。打ち消したものは残りません。評価の場面で使える材料が溜まっていきます。
自分の得意が見えてくる
何を褒められることが多いかを残しておくと、自分では気づいていない得意が見えてきます。打ち消しているとその情報も消えます。
褒める側にも回れる
受け取り方が分かると、人に伝えるときも言いやすくなります。自分が使う言葉も変わります。
完璧に受け取らなくてよい
半分だけ受け取る、でも構いません。全部を認めることが目的ではありません。
その日の状態でも変わる
疲れている日は同じ言葉でも受け取れません。自分が変わっていないのではなく、余力の差であることが多くあります。
回数で慣れていく
一度で変わるものではありません。同じ言葉を何度か使ううちに、出てくるようになります。
身近な相手から始める
上司や取引先で試すより、家族や親しい相手で先に練習してください。失敗しても影響が小さく、回数を重ねられます。
受け取れた回数を数える
打ち消さずに済んだ回数を残しておいてください。できなかった日ばかり覚えていると、進んでいることに気づけません。
謙遜が必要な場面もある
場によっては控える言い方が合うこともあります。使い分ける前提で、受け取る形も持っておいてください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 褒められると否定してしまうのはなぜですか。
A. 褒められたら打ち消すのが礼儀だと教わってきた人が多く、考える前に言葉が出ます。自分では選んでいない反射であることが多く、性格の問題ではありません。
Q2. 何と返せばよいですか。
A. 「ありがとうございます」だけで十分です。そのあとに「でも」を足さないでください。足した時点で打ち消しになります。
Q3. 受け取ると嘘になる気がします。
A. 全部を認める必要はありません。相手がそう見た、という事実だけを受け取れば足ります。今回のことを褒められただけで、次を約束したわけでもありません。
Q4. その場で受け取れませんでした。
A. 責めずに、言われた内容だけ書き留めてください。落ち着いたときに読み返すと入ってくることがあり、あとから受け取ることはできます。
監修:MIKATA編集部
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。
